「今のまんまだと、いっぺんにピカピカにするのは無理だよね」
砥石で磨いてみて解ったけど、魔法で鋼の板を作ってもデコボコを完全になくす事はできなかったから、砥石だとどうしても磨けないとこが出ちゃうんだよね。
って事はだよ、例えば砥石を動かす魔道具を作っても手でやるよりもちょっと早くなるだけで、いっぱい時間がかかっちゃうのは変わんないって事だ。
「う〜ん、なんかいい方法、無いかなぁ?」
それにね、さっきヒルダ姉ちゃんが造って欲しいって言ってたおっきな鏡。
そんなのを作ろうと思ったら、おっきな砥石がないともっと時間がかかっちゃうもん。
だから砥石で磨くんじゃない、他の方法がないかなぁ? って考えたんだ。
「石をすっごく細かくして、粉みたいなので磨くとか? でもなぁ、あれって確か、ピカピカに磨いたのを綺麗にするのに使うやつのはずだし」
前の世界にあった物語ではね、銀でできたスプーンやフォーク、それに花瓶をかを専用の粉で磨いてたりしてたんだよね。
でもそれは古くなったのをもういっぺんピカピカにするためにやってたから、多分砥石で磨くよりもっと時間がかかっちゃうんじゃないかな? って僕、思うんだ。
ん? ちょっと待って。
そう言えばスプーンやフォークって、どうやってピカピカにしてたんだっけ?
なんとなくどっかで見た事があるような気がした僕は、頭をこてんって倒して考えたんだ。
そしたらね、ある事を思い出したんだ。
「そうだ! あれでやってたっけ!」
僕が前の世界で見てたオヒルナンデスヨって番組、あれで確か3人組の女の芸人さんがいい食器を作ってるとこを見に行くってのをやってたんだよね。
その時に職人のおじさんが、磨き方を見せてくれたんだよね。
「確か、バフ磨きって言ってたっけ」
そのやり方はね、麻とか綿で作った布をとかを束ねたもので円形のノコギリみたいなのを作って、それを機械でくるくる回すんだ。
でね、それにスプーンとかを当てると、濁った色だったのがあっという間にお顔が映るくらいピカピカになっちゃったんだよ。
「あれを作れば、もしかしたら鏡だってすぐにできちゃうかも!」
そう思った僕は、同じような魔道具を作れないかなぁ? って考えたんだよ?
でもね、そこで僕は気が付いたんだ。
「でも、あんなにいっぱいの布、僕持ってないや」
バフ磨きってので使ってたのを作ろうと思ったら、すっごくいっぱい布がいるんだよね。
でもそんなの、僕は持ってないし、何より布は作るのが大変だからそんなのに使うってお母さんに言ったらきっと怒られちゃう。
って事は、やっぱりこれはできないって事か……。
「ん? 待って。よく考えたら、別に布じゃなくってもいいんだよね」
あの円盤は布で作ってあったけど、その先っぽはほぐしてあって糸の束みたいになってたんだよね。
って事はさ、あんなのだったら別に布を使わなくってもいいって事じゃないかな?
そう思った僕はね、同時にあるものを思い浮かべてたんだ。
「一角ウサギの毛皮を使ったらダメかなぁ? あれだったら毛が長くって、ふさふさしてるもん」
ブラックボアの毛皮も同じように毛が長いけど、ちょっと硬いんだよね。
だからあれを使うと磨くんじゃなくって削れちゃうような気がするけど、一角ウサギの毛だったら柔らかいから、きっと綿とかの代わりになると思うんだ。
それにね、一角ウサギの毛は柔らかいんだけど、魔物だからとっても丈夫なんだよね。
あれならきっと、何度か使っても大丈夫なのができるって僕、思うんだ。
こないだイーノックカウに行ったばっかりだから、なめしちゃった毛皮はその時に持ってってもう無いんだ。
でもね、皮をはいで煮ただけの奴だったらまだあったはずだからって、僕は裏庭にある物置へ。
そしたら思った通りあったもんだから、それを持って僕はもういっぺん作業部屋に帰ってきたんだ。
「後はこれで魔道具を作ればいいだけだよね」
僕はそう思って魔石とか、魔道具の本体になる材料とかをテーブルの上に並べて行ったんだけど、そこで思ったんだよね。
この一角ウサギの毛皮、こんなにおっきいんだから円盤じゃなくって一度にいっぱい磨けるのを作れないかな? って。
それにね、オヒルナンデスヨってので見たバフ磨きって、置いてある機械についてる円盤が回ってるとこにスプーンを持ってって磨いてたんだよね。
だけどあの方法だと、平らな鏡を磨くには向かないんじゃないかなぁ?
だってさ、あれだと磨いてる面が見れないもん。
だからうまくやんないと、鏡全部がきれいに磨けないんじゃないかなぁって僕、思うんだよね。
「って事は、手に持って鏡に当てないとダメだよね」
そう思って、なんかいい形ないかなぁ? って考えた僕は、ある形を思いついたんだ。
「そうだ! 風車の形にすればいいんだ」
あれだったらくるくる回るとこを上から鏡に当てられるもん。
それにね、くるくる回るちっちゃなブラシで歯を磨くんだよってオヒルナンデスヨのCMでやってたのを僕、覚えてるんだよね。
だからきっと、この方法でもうまく行くと思うんだ。
と言う訳で、製作開始。
この風車の魔道具って、僕が一番最初に作った魔道具なんだよね。
だからちっちゃな子供でも作れるくらいすっごく単純な魔道具なんだよ。
でもね、これはただ回るだけじゃなくってあてたものを磨かないとダメだから、すっごく早く回んないとダメなんだよね。
それにつけるのは風車じゃなくって一角ウサギの毛皮がついた土台だから、重さも結構ある。
って事で、今回のに使う魔石は、ちょっと大きめのブレードスワロークラスを使う事にした。
これならきっと、ちゃんと磨けるくらいは早く回ってくれると思うからね。
材料を用意しちゃえば、出来上がるまではあっという間だったんだ。
そりゃそうだよね、だってただ回るだけの魔道具なんだもん。
ただね、もし早く回りすぎて鏡に傷がついちゃったりしたらダメだから、周る速さが変わるつまみだけはつけといたけど。
「ヒルダ姉ちゃん。鏡を磨く魔道具、作ったよ」
「あら、思ったより早かったのね。こっちもある程度磨けてるわよ」
魔道具はできたから、早速それを持ってみんながいるお部屋に戻ったんだ。
そしたらヒルダ姉ちゃん、僕が魔道具を作ってる間もちゃんと磨いててくれたもんだから、ぼーっとではあるけどちゃんとお顔が映るくらいにまでは磨いててくれたもんだから、僕、びっくりしちゃった。
「こんなに磨けてるんだったら、魔道具を作んなくても良かったのかなぁ?」
「そんな事は無いわよ。だっていくら磨いても、この状態からはなかなか進まないもの。それにこれは小さいからいいけど、もっと大きなものを作ろうと思ったら、この方法ではとても無理よ」
ヒルダ姉ちゃんの言う通り今回のはちっちゃいけど、お姉ちゃんが欲しいのはもっとおっきな鏡だもんね。
それをおんなじように磨くのは大変だから、やっぱり魔道具はいるんだよって言われちゃった。
「それで、ルディーン。その持ってるのが、鏡を磨く魔道具なの? 私には毛皮がついた変な風車に見えるけど」
「うん! この毛皮の毛で磨くんだよ」
それを聞いたヒルダ姉ちゃんはちょっと変な顔したけど、きっとやってみれば解るよね。
と言う訳で早速……っと、その前にっと。
「お姉ちゃん。これで磨くとね、粉が出るかもしないからお外に行こっ」
砥石でも磨いてると細かい鉄の粉が出るんだよね。
だったらきっとこれだっておんなじだと思うし、砥石で磨く時と違ってお水を付けないから木っと飛び散っちゃうと思うんだ。
だから僕たちはお部屋から出て、お庭で磨くことにしたんだよ。
「固定しなくても大丈夫?」
「うん。鉄の板だから重いし、押し付けるわけじゃないから多分大丈夫」
お外に出ると、前に作ったかまどの石の上にヒルダ姉ちゃんが磨いた丸い板を置いて、魔道具のスイッチオン!
そしたらウサギの毛皮がくるくると回りだしたから、最初は中くらいの速さにして当ててみたんだ。
「あっ、ピカピカになってきた」
ぼーっとお顔が映るくらいヒルダ姉ちゃんが磨いてくれてたからなのか、魔道具を当てるとあっという間に表面がピカピカになってお顔がはっきりと映るようになったんだよね。
「これはすごいわね」
「ほんとだ! おかあさん、スティナのおかお、うつってうよ!」
それを見せてあげるとヒルダ姉ちゃんとスティナちゃんはびっくり。
でもね、レーア姉ちゃんだけはそうでもなかったみたいなんだ。
だから何で? って聞いてみたんだけど、そしたら、
「この魔道具って、まったく磨いてない鉄の板でも鏡みたいにできるの?」
だって。
そう言えば、さっきのはヒルダ姉ちゃんがもうお顔が映る程度にまで磨いたやつだったもんね。
だから今度は、僕がクリエイト魔法でもう一個おんなじ板を作って試してみる事にしたんだ。
「う〜ん。なかなか綺麗にならないわね」
「でも、砥石よりは早く磨けてる気がするわよ」
試しにさっきとおんなじ状態で磨いてみたんだけど、なかなかピカピカにならなかったんだ。
確かにヒルダ姉ちゃんの言う通り砥石で磨くのよりは早いけど、これじゃあおっきな鏡を作ろうと思ったらすっごく大変そう。
だからね、僕は回転数を上げて磨いてみる事にしたんだ。
「早くすると粉が飛ぶかもしんないから、みんなちょっと離れてね」
さっきの速さだと殆ど粉は飛ばなかったけど、もっと早くして飛んだ粉がお目めに入ったら困るから、みんなにはちょっと離れてもらった。
でね、早く回した事で鉄の板が飛んでっちゃうとやっぱい危ないからって、クリエイト魔法でかまどの石に板がはまるくらいのくぼみを作って、僕はそこに鉄の板をはめ込んだんだ。
「それじゃあやるね」
そしてそこに一番早く回るようにした魔道具を当ててみると、シャーって音がして、ちっちゃな粉が出てきたもんだからびっくり。
どうやらこれだと早く回りすぎてたみたい。
だから確かに当たってるところがお顔が映るくらい綺麗にはなったんだけど、そこだけがほんのちょっとへこんじゃったんだよね。
と言う訳で、もういっぺんクリエイト魔法で鉄の板を平らに戻すと、今度は回る速さを最初の時よりもちょっとずつ早くしながら何度か磨いてみたんだ。
「これくらいがちょうどよさそうね」
そうして何度かやってるうちに丁度いいくらいの速さを見つけることができて一安心。
それにね、その速さだったらちっちゃな鉄の板でも磨いてる時に飛んでっちゃわない事も解って、この鏡を作る魔道具は無事完成したんだ。
「ルディーン。これって鋼じゃないとダメなのよね?」
「うん。真っ赤になるまであっつくしてトンテンカンしたやつじゃないと、磨いてもつるつるにならないからね」
鉄を溶かして固めただけの奴だと、いろんなのが混ざってるから磨いてもつるつるにならないんだよね。
だからちゃんとした鋼ちゃないとダメだよってヒルダ姉ちゃんに教えてあげたんだけど、
「そうか。じゃあ、大きな鏡を作るなら鍛冶屋さんにインゴットを作ってもらわないとダメね」
そしたらお姉ちゃんはスティナちゃんを僕とレーア姉ちゃんに預けると、村の鍛冶屋さんのとこに走っていっちゃった。
「あっ! 鍛冶屋さんに行くなら、さっき鏡に使った僕の鋼の玉、一緒に頼んできてほしかったのに」
「仕方ないわよ。ヒルダ姉さん、さっき鏡を磨いてる時もずっと、魔道具ができたら大きな鏡を作ってもらわなきゃって言ってたし」
それがあんまり早かったもんだから、僕、鋼の玉を頼む暇もなかったんだ。
「それで、ルディーン。鏡はこれで完成なの?」
「ううん。このまんまだと錆びちゃうでしょ? だからね、油を塗ってから布で磨いてあげないとダメなんだよ」
でも行っちゃったもんはしょうがないよね。
と言う訳で、僕とレーア姉ちゃん、それにスティナちゃんの3人で鏡に油を塗りながら、ヒルダ姉ちゃんが帰ってくるのを待つことにしたんだ。
困ったときの味方、オヒルナンデスヨのおかげで無事、鏡を作る魔道具が完成しました!w
ただ、この鋼の鏡はガラスの鏡と違って、錆などですぐにくすんでしまうんですよね。
ですが村の司祭様に見せたところ、街で売られている鏡には木工の仕上げに使うニスが塗られていると教えてもらえたので、この鏡は本当の意味で完成する事になります。
この話、もう一話使って書こうと思うと中途半端な長さになりそうだったので、これは後書きの余談という形でお披露目する事になりましたw、